乳幼児

乳幼児
 『口呼吸になることによって血中二酸化炭素濃度が低下すると、酸化ヘモグロビンの身体の各組織の細胞との酸素交換率が下がり、身体が疲れやすくなったり集中力が低下することは、ボーア効果をご存知の方であれば理解できる話である。先ごろ受けた海外のオンラインセミナーにおいて、産業革命以前には不正咬合は存在しなかったとの演者からの話には衝撃を受けると同時に学びの不足を思い知らされた。産業革命以降我々の口腔内の環境は咬み合わせを含めてなぜ変わってきたのか。大変興味深い話であり、現代人の不定愁訴を抱えている問題を解決するキーになると私の普段使われていない脳内細胞の部分が騒ぎ始めた。一度確立された治療法を変えることは難しいが、既成の考えを疑う、捨てる勇気も根拠があれば必要であろう。人々の健康に貢献する歯科の関わる役割は気付いていないだけで実は計り知れない』』

2021,5,8ブログより)

 最近は母乳を上手く吸うことが出来ない赤ちゃんが増えているのではないか。当たり前のようにハイハイもできない乳幼児も見受けられる。歯科医療に長く従事していると、壮年期を迎えた方の歯の喪失、年齢に拘わらず歯並びの叢生(歯の重なる状態)、上下咬み合せの乱れ、子供から大人までの口呼吸と様々な問題に出くわす。産まれてから成長する過程において、どこかのステージで正しく成長するはずの歯車が狂わなければ、口腔にトラブルを引き起こす要因も今ほど多くはないのではないか。10歳未満のお子様であれば呼吸の改善と正しい嚥下ができるようにトレーニングを積むことで顎顔面骨格が本来の大きさに発育し、歯の萌出スペースも確保できていることから、正しい口腔機能を獲得するためには生まれた直後の舌の動き、ポジションが重要な要因となる。


 赤ちゃんはお母さんの乳首に舌を絡ませてミルクを吸っています。しかし舌の動きが本来の動きをしない、つまり舌小帯の異常などがあるとうまく吸うことが出来ないために上下の顎堤に(上下の歯肉に)乳を挟むようにして吸引しますので乳首が傷つき乳腺炎になりやすくなります。したがって乳腺炎を起こしている場合には先ず赤ちゃんの舌を診査する必要があるということになります。例えば舌小帯短縮症であれば小帯切除することで母乳をうまく吸えるようになりますが、処置せずそのまま放置した場合には代償反応として口蓋骨・上顎骨が大きく成長しないために鼻気道も広がらず鼻が詰まりやすくなることが予想され、鼻が詰まれば口で呼吸するという代償的結果が生まれます。その後も口呼吸での生活が続けば舌が口蓋に貼り付くことはないので口蓋骨が拡大されず、幼稚園の頃には上下の歯が狭窄したり重なったりして舌を挙上しようにも舌を収めるスペースがなく、結果ですら予後を悪くする原因となってしまうため結果的原因として残り続け、顎の成長発育不全が進んでしまいます。このようにして不正咬合に至った原因を遡って考えると、不正咬合の諸悪の原因は何?ってことになり、鼻詰まり、舌小帯異常(短縮症、舌癒着症)根本原因として多くの場合は当てはまるのではないでしょうか。お子様の成長は早いですので、低年齢のうちに口腔周囲筋の習癖を取り除くように致しましょう。